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米国審査官の統計サイトとの比較

パテントサロンの企画「知財系 もっと Advent Calendar 2023」に登録しました。12月1日から25日まで1日に1つ、皆で記事を投稿するという楽しい企画です。今回は、この企画用の投稿になります。


せっかくなのでクリスマスっぽい内容を、と思いましたが、当サイトにそんなものはありません。クリスマスで浮かれた審査官の審査が甘くなるかも!?と考えて、クリスマス付近に査定が出た特許出願の特許査定率を集計することも検討しましたが、さすがにそれはやめました。


なので、せめて普段のブログとは違う内容にしようと考えて、今回は、米国審査官の統計サイトと当サイトを比較しようと思います。米国審査官の統計サイトは、有料のサイトもいくつかありますが、無料で手軽に利用できるサイトとしてPatentBotsがあります。実際に利用されている方も多いのではないでしょうか。


PatentBotsでは、無料の統計情報として、審査官の教育レベル・勤務場所・勤務年数等の雇用情報、特許査定率・難易度のレーティング・特許査定に要する期間・インタビューの有効性等の統計情報を閲覧できます。例えば、下記スクリーンショットは、Art Unit 3689に所属する審査官の特許査定率です。このArt Unitは、全体的に特許査定率が低く、絶対に当たりたくありません。PatentBotsでは、無料でも十分な統計情報を閲覧できます。



無料で利用できる他の統計サイトとしては、Smartpatがあります。閲覧できる統計情報は、概ねPatent Botsと同様のようですが、残念ながら2020年8月を最後にデータがアップデートされていないようです。有料の統計サイトでは、PatentAdvisorが有名で審査官の総合的なスコア等を閲覧できます。他には、PatentpruferBigPatentDataUnifiedPatentsといった統計サイトもあるようです。


米国には、以上のような複数の統計サイトがあります。日本には同様の統計サイトがなかったので、当サイトを作りました。当サイトの作成にあたり、PatentBots等の統計サイトを参考にして、どのような統計情報を集計するかを検討しました。特に、Art Unitに相当する所属部署(技術単位・審査室)の中での各審査官の特許査定率やインタビューの有効性は、日本の権利化業務でも有効活用できると考えました。


当サイトのオープン当初は、特許査定率等の数少ない統計情報を載せているだけであり、有料コンテンツの数も少ないものでした。その後、米国の統計サイトには無いであろう下記の統計情報を主に集計して、徐々にコンテンツを拡充しました。もしかしたら米国の統計サイトにもあるかもしれませんが、その場合には、クリスマスということでご容赦下さい。


(1) 一発特許査定数・一発特許査定率

(2) 査定直前に意見書だけで応答した場合の特許査定率等

(3) 査定直前に手続補正書と意見書で応答した場合の特許査定率等

(4) 審査官のIPCごとの特許査定率等

(5) 拒絶理由条文コードの各条文の適用率

(6) 前置審査における特許査定率等

(7) 審判請求時に補正をしなかった場合の特許審決率等

(8) 審判段階の一発特許審決率・一発拒絶審決率等

(9) 情報提供を受けた場合の特許査定率等


(1)は、正直のところ見てもフーンって感じだと思いますが、あまりにも一発特許査定が多いと、審査がちょっと適当なのかなと思ってしまいます。(2)(3)は、米国でも知りたい方はいらっしゃるのではないでしょうか。今現在対峙している審査官のBroadest reasonable (たまにunreasonable) interpretationのもとで、意見書だけで通るのかを統計的な観点で検討すると、より精度の高いOA対応が可能だと思います。


(4)も、審査官が出願人の技術に詳しいのかを把握するうえで有用だと思います。米国の審査官も適用条文にクセがあるはずなので、普段から明確性に厳しい人なのか等を把握したうえでOAに対応するために、(5)も米国の統計サイトにあれば活用できると思います。(6)の前置審査は日本に特有の制度ではありますが、米国の統計サイトでも審判段階の統計情報を載せているので、似た情報はあるかもしれません。日本であれば、(6)の特許査定率が極端に低い審査官もいるので、その場合には、前置審査に望みをかける補正は不要といった判断が可能です。


日本の権利化業務では、(7)によって、審査官の拒絶査定が補正無しでどの程度覆っているのかを把握することで、拒絶査定の精度をある程度推定できると思います。(8)も同様です。(9)は、米国でも同様の制度があるので、権利化阻止業務で有効活用できると思います。


なお、本当は早期審査を申請した場合の特許査定率等の統計情報も集計していますが、まだサイトにアップロードできていません。この統計情報は、早期審査を申請すると審査が適当になる審査官なんてまさかいないだろうなと思って集計したのですが、米国の統計サイトでは、このような統計情報は無かったと思います。


以上の通り、当サイトは、米国の統計サイトを参考にして作成しましたが、米国の統計サイトには掲載されていない種類の統計情報も掲載しています。権利化業務で本質的なことは、拒絶理由通知書等で指摘された内容ですが、統計情報を補足的に利用することで、権利化業務の精度を高めることができます。米国で複数の統計サイトがあるのは、審査官の統計情報が有効活用できることの裏付けだと思います。これまで日本に無かったのは、統計サイトを作ろうと思った変態が私くらいしかいなかっただけでしょう。


今年も残りわずかになりましたが、今後も皆様の業務に少しでも役立つ統計情報を集計したいと思いますので、今後とも何卒宜しくお願い致します。今回の投稿は以上になります。皆様素敵なクリスマスをお過ごし下さい\(^o^)/

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